私たちは生きている限り、突然の喪失に直面する可能性があります。
突然の喪失とは、
・大切な家族やペットが突然事故や病気で亡くなる。
・健康と思っていた自分自身や家族が突然、余命宣告される。
といったもの。
また、上記とは異なりますが、
・問題ないと思っていた人から突然、離別・絶縁を言われる。
・事故・災害や突然の病気などで、自分の身体の一部を喪失したり、機能不全になる。
なども 本人にとって大きな「突然の喪失」と言えます。
このような巨大な「突然の喪失」に対して、人の心がどのように回復していくのか、「悲嘆のプロセスの12段階」として体系化したのがアルフォンス・デーケンでした。
アルフォンス・デーケンとは
アルフォンス・デーケンは司祭であり哲学者であり、上智大学の名誉教授でもあった人。
専門は「死生学」であり、「死への準備教育」の必要性を唱えた方でもありました。
彼が提唱した12の段階は主に「大切な人との突然の死別」について書かれたものですが、それ以外の「突然の喪失」にも応用可能なものです。
「人の心が突然の喪失からどのように回復していくのか」を知っていることで、必要以上に不安になったり、寄り道せずに回復の道を歩むことが可能になります。
また、このような「突然の喪失」に直面した人を支える側の立場になったときも、この12の段階を知っていることが大きな支えになるでしょう。
本記事では、大切な人(もしくはそれに準ずる大切なもの)を突然喪失した場合の人の心の回復のプロセスをご紹介します。
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アルフォンス・デーケンの悲嘆のプロセス12段階
以下でアルフォンス・デーケンが明らかにした12の段階をご紹介します。
1段階 精神的打撃と麻痺状態
愛する人の死という衝撃によって、一時的に現実感覚が麻痺状態になります。頭が真空になったようで、思考力がグッと落ち込んでしまうのです。この状態は、心理学で言う一種の防衛機制と考えられます。心身のショックを和らげる、生体の本能的な機能です。
2段階 否認
死という事実を認めることを否定します。感情だけでなく、理性も死という事実を認めようとしません。「あの人が死ぬはずがない。きっと何かの間違いだ。」という心理です。
3段階 パニック
身近な人の死に直面した恐怖から、極度のパニック状態に陥ります。悲嘆のプロセスの初期に顕著な現象です。なるべく早く抜け出すことが望ましく、またこれを未然に防ぐことは、悲嘆教育の大切な目標の一つといっていいでしょう。
4段階 怒りと不当感
ショックがやや収まってくると「なぜ私だけが、こんな目に合わなければならないのか」という、不当な仕打ちを受けたという感情が沸き上がってきます。ガンのように、長期間看病した場合には、ある程度心の準備ができる場合もありますが、急病や災害、事故、自死などのような、突然死の後では強い怒りが爆発的に吹き出してきます。
故人に対しても、また自分にひどい仕打ちを与えた運命や神、あるいは加害者、そして自分自身に対する強い怒りを感じることもあります。
5段階 敵意とうらみ(ルサンチマン)
周囲の人々や故人に対して、敵意という形でやり場のない感情をぶつけます。遺された人のどうしようもない感情の対象として、犠牲者を必要としている場合が多いのです。病死の場合、敵意の矛先は、最後まで故人のそばにいた医療関係者に向けられるケースが圧倒的です。日常的に患者の死を扱う病院側と、かけがえのない肉親の死に動転している遺族側の間に、感情の行き違いが起こる場合が多いからです。
6段階 罪意識
悲嘆の行為を代表する反応です。「こんなことになるのなら、生きているうちに、もっとこうしてあげればよかった。」という心境です。過去の行いを悔やんで自分を責めることになります。
7段階 空想形成・幻想
空想の中で、故人がまだ生きているかのように思い込み、実生活でもそのように振る舞います。亡くなった子供の部屋をどうしても片付けられず、何年もそのままにしているという例はあちこちで聴きます。いつ子供が帰ってきてもいいように、毎晩ベッドの上にパジャマまでそろえておくという話もあります。
8段階 孤独感と抑うつ
葬儀などが一段落し、周囲が落ち着いてくると、紛らわしようのない寂しさが襲ってきます。健全な悲嘆のプロセスの一部分ですが、早く乗り越えようとする努力と周囲の援助が大切です。
9段階 精神的混乱とアパシー(無関心)
日々の生活目標を見失った空虚さから、どうしていいかわからなくなり、あらゆることに関心を失います。
10段階 あきらめー受容
「あきらめる」という言葉には「明らかにする」というニュアンスが含まれています。自分の置かれた状況を「あきらか」に見つめて受け入れ、つらい現実に勇気をもって直面しようとする努力が始まります。
11段階 新しい希望ーユーモアと笑いの再発見
悲嘆のプロセスをさまよっている間は、この苦しみが永遠に続くような思いに落ち込むものですが、いつかは必ず、希望の光が射し込んできます。
こわばっていた顔にも少しずつ微笑みが戻り、ユーモアのセンスもよみがえってくるのです。ユーモアと笑いは健康的な生活に欠かせない要素です。その復活は悲嘆のプロセスをうまく乗り切ったしるしとも言えましょう。
12段階 立ち直りの段階ー新しいアイデンティティの誕生
そして、立ち直りの段階を迎えます。しかし、愛する人を失う以前の自分に戻るということではありません。苦悩に満ちた悲嘆のプロセスを経て、新たなアイデンティティを獲得し、より成熟した人格者として生まれ変わることができるのです。
書籍:よく生きよく笑いよき死と出会う 著者:アルフォンス・デーケンより
悲嘆のプロセス12段階の注意点。
悲嘆を経験するすべての人がこの12段階を経るわけではありません。
また、このプロセスを経る場合でも、順番通り全ての段階を経る人もいれば、順番が異なる人もいます。
そして、上記の12の段階は「本人が少しずつ消化する必要」があります。
もちろん「本人が消化していく」ことを周りがサポートすることはとても有効ですが、最後はその人自身に委ねられる、誰も肩代わりできない、ということも押さえておきましょう。
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終わりに。
もしあなたが突然の喪失に直面しているなら、このプロセスを知ることがとても助けになるでしょう。
起きた出来事を受け入れられなくていいんです。
運命や神に怒りや憎悪を抱いてもいいんです。
無関心になってもいいんです。
それが必要なプロセスだから。
最大限自分を大切にしながら、ゆっくりとこのプロセスを歩んでいきましょう。
一方、もしあなたが今、「突然の喪失」に直面していないなら、万が一そういった状況に直面したり、あなたの家族や知り合いが直面したときにこのプロセスを思い出してください。
これが一つの道標として、あなたや、あなたの大切な人の支えになることでしょう。
もしあなたの周りで必要としている人がいると思ったら、ぜひシェアしてあげてくださいね♪
ここまで読んでくださった あなたに祝福の光が降り注ぎ、ますます輝く毎日になることを心から祈っています(。-人-。)
河野雅(こうのまさし)@輝くヒントでした。
参考図書:
[…] さらに読む ⇒輝くヒント出典/画像元: https://mab-log.com/grieving_process/ […]