Contents
逆境を支えたのは「使命感」と「家族」
ーー当時はどんな気持ちで頑張られていたんですか?
今振り返ると、社内でコーチングを広めることは「孤独な戦い」だと思っていました。
漫画、バカボンドの宮本武蔵な感じですね。
「たとえ前からは切られたとしても、後ろを向いて背中には切り傷をつけられない。」
「切り拓こう。」
「細々とでも、継続しよう。」
そう強く思ってました。
ーー何がそこまでの想いを抱かせたんでしょう。三橋さんを支えていたものは何だったんですか?
使命感でしかないですね。
自分が最高の価値を出せそうなことがあって、それを求めている人がいる。
うちはベンチャー企業なので、目標設定もストレッチして高めに設定することが多いんです。
しかも真面目な人が多いから、精神的にしんどくなっていく人もいる。
社内の知り合いがつらそうにしているのを見ていられなかった。
もともと持っている可能性をもっと引き出せたら、この人も楽になるし、会社もハッピーなのになぁと。
それを今ここでやれるのは私しかいない。
そういう想い、使命感が支えになっていましたね。
ーーそれは止められませんね。使命だったら、そのために使う命ですもんね。
キツイけど、「魂がこっちに行きたい。」のを止められない、という感じでした。
あとは家族、特に奥さんの力が無かったら、今の状態は絶対無いですね。
苦しい時や辞めたい時もありましたが、一番近くで精一杯支えてくれていました。奥さんもとても辛かったと思います。私がみるみる元気がなくなっていきましたので。
一人では絶対続けられなかったと思います。
Sansanも、コーチングも。
本当に苦しい状況だったので、コーチングも少しアクセルは緩めつつ「続けるのが大事」と思ってほそぼそやっていました。
この頃はちょうどCTIジャパンの上級コースを受けていた時期と重なるんですが、仕事的にも忙しさは増す一方でしたね。
今思うと上級コースがあったのも、社内でコーチングを続けられた理由の一つだと思います。
スポンサーリンク
コーチングの資格試験に合格。社長の「いいね」で風向きが変わりだす。
そんな中、2015年のはじめにコーチング資格(CPCC)の試験を受けて合格したんです。
試験前には今まで関わってくれた人たちの顔が思い出されて、感謝の気持ちが溢れて涙がポロポロ出てきました。
泣いたことで緊張していた気持ちが吹っ切れて、試験では自分の限界に挑戦できました。
合格通知を家で受け取り、奥さんとハイタッチしました。
とても嬉しかったので、資格試験に合格したことをFacebookに投稿したら、社長が「いいね」を押してくれたんです。
社長は日頃なんでも「いいね」を押すタイプではないんです。
その社長が「いいね」を押してくれた。
とても嬉しかったですね。
そのことについて社長と直接は話せていませんが、私が頑張って「資格をとる」という一つの区切りまでやりきったことへの、社長なりの「いいね」だったのではないかと勝手に思っています。
ーーやっと逆風から少し風向きが変わりだした感じがしますね。
そうですね。
社内コミュニティ制度のほうは、半年毎の更新で続けていて、結局2015年の11月まで1年半やりました。制度更新申請の度にコーチング受講者のアンケートを、本人の承諾をもらって人事の役員に共有していました。
ちなみに、この「アンケート結果を必ず役員に共有する」というのは、「社内でコーチングを形にしていく」という目的を実現するために必要なことと考えていての行動でした。
言葉でうまく説明できない「コーチングの価値」を実績で伝えていくということは、効果的だったのではないかと思っています。
創業記念パーティでコーチングについて発表。帰り道に号泣。
Sansan は6月11日が創業日で、この時期に毎年創業記念パーティをしています。
2015年のパーティのコンテンツの中にはコミュニティ制度を社員全員に発表する、という企画がありました。
私もコーチングのコミュニティについて発表できることになったんです。
これはチャンスだと思って「何を話そうか」と色々と念入りに考えて、期待も込めて壇上にあがったんですが、みんな飲み散らかしているんです(笑
私の話を誰も聴いてくれない。
自分も一気飲みとかして注目を集めようとしたんですが、全く効果がなくて「どうしよう」とアタフタしてました。
そしたら社長が壇上にあがってきて、かなり酔っている様子ではありましたが、みんなに
「こいつのコーチング、結構いいらしいんだよね。」
と言ってくれたんです。
すると空気が変わって少し静かになり、なんとか発表することができたんです。
この日のことはよく覚えています。
雨の日でした。
帰り道、最寄り駅から家までずっと傘で顔を隠しながら号泣していました。。。
コーチングを否定されているとずっと思っていたんですが、社長にコーチングを認められて何かの感情が開放されたんです・・・。
ーーどういう気持からの涙だったんでしょう?
なんでしょうね。。歓びとはちょっと違って、その時、苦しさをはじめてちゃんと受け入れられたんじゃないかなと。
「本当に孤独で苦しかったな。」って。
苦しいという気持ちを押し殺して、前を向いて切り傷を受けながら歩んでいたけど、社長から認めてもらって、そこではじめて「自分の苦しさ」を自分で受け入れられたんだと思います。
本当に久々の号泣で、ヒックヒック言いながら歩いていました。
スポンサーリンク
コーチングの口コミが社内に広がり、ついに正式にコーチに。
その前後あたりから、社内に口コミが広がっていく実感が増えだしました。
当時はコーチングが形になるまで、全社員にやらせてもらおうと思ってやっていました。
そして、コーチングで関わった社員数が70人を超えたくらいからだと思うんですが、社内のあまり面識がない人から「コーチングしてください。」って言われることが増えてきたんです。
「不思議なことになってるな。」と思いましたね。
なにやら自分の知らないところで、コーチングが語られている。
それから1ヶ月位たったある日、確か2015年の10月に、人事部長とのミーティングがセットされて「社内で正式にコーチングができないか検討したい。」という言葉をいただきました。
ーーどんな気持ちでそれを受け止められたんですか?
その時はまだ猜疑心がありましたね(笑
「ほんとですか。」みたいな。
ただ、その後人事部長とミーティングを重ね、「本当にやっていきたい。」という話を受けたあとは、ビルの非常階段で本気のガッツポーズがでました。
「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
すぐに奥さんと私のコーチに電話して、「やりました。」と報告しました。
ーー感動的ですね。
社内コーチ制度は2015年の11月からスタートしています。「仕事としてやっていいよ。」と言われて予算もついて、人事部兼務になりました。
それで「あ、これ結構会社も本気なんだな。」という実感も湧いて、そこからは冒頭のとおり業務時間外も含めてコーチングをやっています。
研ぎ澄まされる感覚と、本気のクライアントとの真剣勝負。
ーー社内でコーチングをしていてどんなことを感じられていますか?
今まで社内で90人くらいの社員にコーチングをさせていただきましたが、同じ関わりが本当に通じないと思う毎日ですね。
セッションは自分の気持としては失敗の連続。そこで満足したことはまずありません。
同じ会社の人間でも、全く喋ったことのない「はじめまして」の人とこの60分をどういう時間にしていくか。
その場その場で五感を研ぎ澄ましてやらないと、うまくいかない。ビリピリ、ひりひりした緊張感。そこに歓びも感じています。
コーチングをやればやるほど自分の感覚が研ぎ澄まされていっている、ということも感じています。
たとえば、コーチングで関わっている社員と社内ですれ違ったら何か表情が気になって、その場で立ち話を3分ほどしたら、気づきと変化が相手に生まれている、ということが先日ありました。
また、これは全然別の話なんですが、休みの日に家族で公園にいるときに、10mくらい先の方で小さなトカゲが動いたのがわかったんですよ。確かめにいったら、本当にそこに小さなトカゲがいた。奥さんに「なんでそんなことわかったの?」と不思議がられるようなことも最近起こっています。
なんだかコーチング的な研ぎ澄まされた感覚が日常的にあらわれている感じです(笑
ーーキレキレな感じですね(笑)
同時に、私のクライアントになってくれている社員のみなさんに感じることは、みなさんとてもとても真面目で真摯ということです。
やはり、コーチングの成果はクライアントとコーチの2人で創り出すものだと思っていて、このクライアントの取り組む姿勢が素晴らしい。
たとえば、私のコーチングでは、必ず最後は具体的な行動面の宿題を持って返ってもらうようにしているのですが、ほとんどの人がしっかり宿題に取り組んで報告をくれます。
これだけクライアントが本気なので、私も日々引き締まる思いでいっぱいです。
昨日の自分を超え、更なる自分に挑戦しています。
スポンサーリンク
社内に拡がるコーチングの影響。
ーー会社への影響はいかがでしょう?
私がコーチングをしているリーダーの何人かが、メンバーと1対1の対話の時間をとるようになりました。
「傾聴」や「相手の話を聞く大事さ」が自然と社内に伝播していっている感じがします。
また、職場でイライラして機嫌の悪かった人が自分の在り方を見直して穏やかになったり、とてもロジカルで技術が尖った人がの感情面を意識するようになったりと、じわじわ影響が広がっているように感じます。
ーー三橋さんのコーチングが確実に会社に浸透していっている感じがします。
私は社内コーチという立場でコーチングをしていますが、私だけじゃなくていい。
社内の日常に、「相手を尊重して話しを聴く」というような関わりがもっと広まっていくといいなと思っています。
企業内でコーチングを仕事する「肝」は、「ともかく継続して、価値を感じてもらうこと。」
ーーそんな三橋さんが思う、企業内でコーチングを仕事にしていく肝はなんだと思われますか?
「ともかく継続して、目の前のクライアントに価値を感じてもらうこと。」だと思います。
絶対止めないと思っていたし、止めなかったのが良かった。
そして、ひとつのセッションが常にチャレンジする場、真剣勝負だと思って向き合っていました。
社長にコーチングをするなんて、怖かったです。
そして、やったらすごい挫折だったんですが、この失敗も意味があったと思うんです。毎回価値をだそうと最大限チャレンジし、ちゃんと「失敗」も重ねていく。
でも、本当に価値があるものを続けていけば、認められていく。
自分の足跡ができ、みんながそれを評価してくれる。
足跡というのは、「自分が関わらせてもらった人たちが起こしている変化。」のことで、その人達の変化を見て周りの人は認めてくれる。
ちゃんと目の前のクライアントに価値を届けること。自分の力の先へ挑戦し続けること。
これに尽きると思います。
ーーたとえ逆風でも歩み続けて、足跡を残していくのが大事なんですね。
はい、結局は実績でしかないと思います。
あとは、学びも止めないことですね。
本はずっと読んでいます。たとえば、古典では「7つの習慣」。
アドラーの「嫌われる勇気」も人に認められたい願望が強い人にはオススメです。
私自身がこの本を読んで「すべての人に認められたい」という囚われを捨てられ、救われたところがあります。
あとは、座禅がいいですね。色んなお寺で週末などにやっているので、気軽に参加されてみてはどうでしょうか。
五感を研ぎ澄ますことは、コーチングにすごく大事だと思いますね。直感力は、コーチとして大きな武器になりますので。
コーチングには、間違いなく価値がある。
ーーでは最後に、特に企業内でコーチングを仕事にしたい人にメッセージをお願いします。
「コーチングを学んだり関わったみなさんがきっと感じているとおり、コーチングには間違いなく価値がある。」
ということを伝えたいですね。
コーアクティブ・コーチング®を学んでいる方はみんな価値を感じてますよね。
一方で、「学んでる我々しか効果がないんじゃないか?」とか、「職場で通用するの?」という気持ちもあると思うんです。
でも、間違いなく価値があります。
ここは自信を持って欲しいです。
同時に、「全員に好かれなくていい。認められなくていい。」というのも大事だと思います。
「100人のうち、5人に最高の価値を届けられたら幸せ。」
こう考えるように視点を転換して、私はとても気持ちが楽になりました。
最初から全員に認められようとするとハードルが高いし、傷つくことも多い。
価値を感じてくれる人が絶対いるので、まずはその人に全力で関わり価値を感じていただくこと。
これを積み重ねていくことだと思います。
そうしたら、価値を感じた人が、価値を伝えてくれるようになる。
想いがあるなら、ぜひ挑戦して欲しいです。
ーー今日はありがとうございました。
———<インタビュー本文・ここまで。>———
●Special thanks to Sansan.
100万人がダウンロード。Sansanの個人向け名刺管理アプリ:Eight
その他:コーチングを仕事にするための関連情報(リンク)
●CTIジャパン:三橋さんがコーチングを学ばれた、コーチングトレーニングスクール。ICF(国際コーチ連盟)認定のプログラムを提供しています。
●三橋さんが行かれている座禅のお寺:補陀山長谷寺
※お近くでも、週末などに座禅できるお寺、意外とあると思います。ぜひ調べてみてください。
●三橋さんオススメの書籍:あくまで一例です。
コーチングバイブル:CTIジャパンが提供するコーアクティブ・コーチングについて書かれた、まさにバイブル的な書籍。
7つの習慣:自己啓発の古典ともいえる良書。インタビュアー河野の人生を変えた一冊でもあります。
嫌われる勇気:自己啓発の源流、アドラーの教え。まだ読んでない方は、ぜひ!
バガボンド:スラムダンクの作者井上雄彦さんが描く、宮本武蔵が主人公の漫画(原作は吉川英治)。
論語物語:論語が物語で書かれていて理解しやすく、三橋さんの在り方の原点になっているそうです。
聞き手:河野雅(こうの まさし)プロフィール1972年、京都府京都市生まれ。熊本県南阿蘇村在住。ライフコーチ。1995年、立命館大学理工学部卒業。 建設業界でコンサルタントとして高速道路の計画・設計などに従事。 2003年にCTIと出会い、2006年独立。 自らの内なる声に従い、10年間過ごした東京から、2014年に阿蘇山のふもと、熊本県南阿蘇村に移住。阿蘇の大自然を感じながら、人生を変容させるコーチングを提供しています。 株式会社みちあふれる輝き代表取締役 CTIジャパン上級コーストレーナー 米国CTI認定 プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ(CPCC) 2006年取得 国際コーチ連盟認定プロフェッショナルコーチ(PCC)2011年取得 |
あわせて読みたい。