Sansan株式会社 オペレーション部業務企画担当 兼 IT&ロジスティクス部 兼 コーチ 三橋新
1979年埼玉県生まれ。 順天堂大学を卒業後、株式会社フルキャストを経て、Sansan株式会社に入社。 2015年11月に会社よりコーチングを人事制度として認められ、企業内コーチとして活動中。強みは、人や組織の可能性を信じ変化を創る力。もともと堅実タイプだが、マイナス思考のサイクルを行動で塗り替え、結果行動派に。 ◆資格 米国CTI認定 プロフェッショナル・コーアクティブ・コーチ(CPCC) 2015年取得 |
専業プロコーチ・インタビューシリーズの背景や意図はコチラの記事を御覧ください。
—-<以下、インタビュー本文>—-
ーー現在のコーチングのお仕事の状況をお聴かせください。
Sansan株式会社というクラウド名刺管理サービスの企画・開発・販売をしている会社で、2015年の11月から企業内コーチという立場でコーチングをしています。
参考:Sansan株式会社
社員数は全体で250人くらい。その中で社内のクライアントは現在約40人で、コーチングのセッション頻度は隔週でやっています。コーチングの対象は新卒からリーダーまで。
社内コーチの制度は社員向けということもあり、役員は対象外になっています。
コーチングの仕事は私の会社の仕事全体の3割※くらいですね。3部署を兼務していて、コーチングは人事部としての役割です。
※河野注:「仕事の7割以上コーチング」という私自ら定めた専業プロコーチの条件はあるものの、「企業内コーチであり、独立系コーチとは立場が異なること。」「会社からコーチという役割を正式に与えられていること。」さらに、「三橋さんが今の立場を確立していく物語は多くの方に勇気と智慧を提供できるのでは。」、と考えて今回インタビューさせていただきました。
今は基本、朝、昼、夕とコーチングをしています。
だいたい朝8時から1件。12時・ランチの時間に1件、14時~15時くらいに1件、18時以降に1件。
今日も朝8時からやっていました。
会議室は来客や会議で使われるため基本的に社外でやっており、その費用はすべて会社持ちです。
ーー業務時間外でもコーチングをされているのですね。
業務時間外でコーチングをしているのは、まだ社内コーチの立場になって日が浅い状態で、他の仕事に大きく影響を与えたくないと思っているからです。
あとは、コーチングは自分が価値を出せると思っていることなので、そのための時間をどう作るかを考えて、今は「時間外を主に活用する」という選択をしています。
最近嬉しかったのは、コーチングのセッションをした人へアンケートをとらせていただいたのですが、40名近く回答が集まった中で、コーチングの継続希望率が100%だったこと。
ーー40名で継続希望100%はすごいですね。
はい。本当にありがたいです。
ただ、ここに至るまでには沢山の挫折や苦労がありました。
Contents
挫折から自分と向き合い続けた3年間。
ーーでは、その現在の状態に至る話をお聴かせください。
私は格好つけだったんです。昔は。
前職は、社長室採用という名前に惹かれて入社して、経営企画室に配属されました。「経営企画室という言葉が名刺の肩書にあるだけで嬉しい。」というのが20代の私の本心でした。
30歳で今のSansanという会社に転職したのですが、前の会社で現場の営業、マネージャー、経営企画もやっていたので、「自分は何でも出来る。」と思っていました。
今の会社は入社当時30人くらいの規模だったこともあり、営業でTOPを取れると思っていました。
が、蓋を開けたらTOPを取れない。やっぱり営業には営業の猛者がいるんです。向き合っても結果が出ず、挫折しました。
その後、異動で「経営管理部(人事/総務/法務担当)」に移りました。
「こっちは大丈夫だろう。前の会社での経験もあるし。」と思っていたら、こちらも大苦戦。
管理系の本当にプロフェッショナルの人たちとは全然レベルが違ったんです。
ある日、法務として採用したメンバーが法務系雑誌の「約款特集」を楽しそうに読んでいて、これは勝てないなと。
「ここでも通用しないのか。」と愕然としました。
こんな状況で、しかもまわりに優秀な人間がたくさんいる会社なので、
「自分は何で価値を出し、会社に貢献していくのか。」
「自分の強みは何なんだろう。」
という問いに3年くらい本気で向き合い続けました。というより、Sansan という会社で生き抜いていくためには、向き合わざるを得なかったんです。
ーー向き合ってる最中はどんなお気持ちでしたか?
「このままでは生きていけない。」
「このままでは存在意義が無い。価値が無い。」
と思っていました。
自分で自分を追い込んでいるし、周りからも追い込まれていました。
仕事の結果も出なくて、「どうすればいいんだろう。」と、ずっと考えていました。
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役員の一言がきっかけで、コーチングに出会う。
この状況を変えたのが周りのサポートであり、気づいていなかった自分の強みでした。
当時の社内で、「自分の強みを知ることを目的に、全社員から一人ひとりの社員の強みをフィードバックしてもらおう。」という企画があって、その時のある役員から私へのフィードバックがコーチングという道を進むきっかけになったんです。
それまでの私の「自分の強み認識」は、「マルチタスク」。同時並行で色々なことが出来る、ということ。
さらに、雑多にちらかっている仕事を綺麗に整える業務改善的なところに強みがある。
そういう認識だったんです。
ですが、その役員は、
「三橋と話していると、場が Comfortable(快適)になる。」
と伝えてくれたんです。
今だと、「自分のあり方がつくりだす場の雰囲気のこと。」だとわかるんですが、聴いた時は全然しっくりきませんでした。
さらに、これを強みとしてどう活かしていけばいいかもさっぱりわかりませんでした。
自分では気付かず、また聞いても「自分の強み」と思えなかったので。
ですが、せっかくいただいた言葉なので、「これを強みとした場合、どんな仕事が向いているのか?」と視点を変え、思考を思いっきり振ってみたんです。
すると、「人と関わる何か。」じゃないか、ということが見えてきました。
「人と関わる何か」から自分の人生を振り返ると、
前職の社長から「聞き上手」と言われていたり、
飲み屋で友人の話を聴いていたら、いきなり相手が心の奥に閉まっていた自分の感情に気づいて泣き出してしまったり、
学生時代に彼氏がいる女性からよく電話で相談されていたり(笑
こういったことを思い出しました。
それで、
「もしかしてこれって既に自分の中にあるのかな。」
「この強みを活かす何かがあるのかな。」
と思って調べているうちに、コーチングという言葉に出会ったんです。
当時は図書館でよく本を借りて読んでいて、コーチング関係の本を探して手にとったのが「コーチングバイブル」という書籍でした。
今思うと、これが運命的な出会いだったと思います。
楽しくて仕方がなかったコーチングの学び。
コーチングバイブルの最初にコーチングの人間観のようなものが書いてあって、
コーアクティブ・コーチング®では
「人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けるところのない存在である。」
と表現されている部分ですが、それを読んで
「まさに私がやりたいことがここに書いてある。」
と震えました。
しかも、かなり分厚くて専門的な本なのですが、一気に読んでしまっていたんです。
で、「これに思いっきり振ってみよう。」という決断が大きな転換になりました。
早速、コーチ・エィ、CTIジャパン、チームフローというコーチングのスクール3社の説明会に行きました。
人の人生に深く関わりたいと思っていた私には、CTIがど真ん中で、「ここに行こう」と決めました。
それが2014年の8月でした。
ーーCTIジャパンでコーチングを学びだしていかがでしたか?
楽しくて仕方なかったですね。
基礎コースのテキストの「コーチングスキル一覧」を読んだ時に、「あぁ、自分が自然とやってきたことが、すべてここに書いてある。」と思って、さらにフィットしました。
基礎コースや応用コースで学んだことは、当時の上司も含めてすぐに身近な社内の人たちに試させてもらっていました。自分としては、このお試しコーチングさえも「役に立つのだろうか」という不安があったのですが、勇気を出して誘ってみるとみなさん快く引き受けてくれました。
覚えたことを実践していくと、出来ることが増えていく。学ぶってこんなに楽しいことなんだと初めて気づきました。そして、気づけば夢中になってやっていました。
こんな状態ですので、CTIジャパンの応用コースから、プロの資格を目指す上級コースに躊躇せずに進みました。
そして、この頃から「社内で広めたい。」と思っていましたね。
上級コース中のクライアントさんたちは「社内でやっていい」という申請書を上司に書いてもらって、仕事として認識してお金を貰わずにやっていました。
また、業務時間以外で社外の方とも練習していました。上級コース中はだいたい社内外あわせて8人前後のクライアントさんがいました。
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コーチングを社内コミュニティ制度に起案。
話が前後するんですが、応用コースの途中くらいの2014年から社内コミュニティ制度を使って、社内でコーチングをしはじめました。
うちの会社は、社員が起案して出来たコミュニティ、たとえばサッカー部とか、ラーメン二郎を食べに行く二郎部とか(笑)そういう活動を支援していこう、という制度がありまして。
この制度は複数の人間が集まってやるものが対象だったんですが、
「待てよ。」と。
「視点を変えればコーチングもこの制度に乗せられるかもしれない。」
と思ったんです。
1対1で行うコーチングがコミュニティを形成するって無理がある感じがしますが、
「コーチングを受けた人が、人との関係性の問題を解決して自らより多くの関わりを実現して、社内が活性化していきます。」
みたいな文章を作って、コミュニティ制度に起案しました。
正直、この起案をすることもとても怖かったのを覚えています。
「こんなの申請していいのかな」とか「否定されないかな」とか。
でも、起案は決めてからその日のうちに提出していました。
やろうと思ったらすぐにやってみることが、私のサボータージュ※への対処方法です。
※河野注:コーアクティブ・コーチング®では、自分の可能性を自ら蓋するような思考のクセを「サボタージュ」と呼んで、その思考に振り回されないようにします。
そしたら上長は理解してくれて、その後押しもあって会社は承認してくれました。
ーーコーチングコミュニティへの会社からの支援は、具体的にどのよう形でなされたのですか?
コミュニティ制度でランチ代2,000円(ひとりあたり1,000円)まで、という形で補助が出たんです。
最初は前のめりな気持ちがあり、15回/月の実施回数で申請したのですが、業務に支障がないようにということで5回で承認されました。
社長にコーチングで撃沈。仕事でも逆風が吹き始める。
また、社内コミュニティ申請と同じタイミングで、社長にコーチングについて話し、コーチングさせてもらうというチャレンジをしました。コーチングが会社にとっても絶対にいいものだと確信していたので、伝えたかったし体験してもらいたかったんです。
ちょうどCTIジャパンの応用コースが終わったあたりで社長にアポを取って、ランチの時間に挑みました。
その時は社長が色々と悩みを話してくれたのですが、コーチング的には何も関われずにただただ聴いて終わりました。
ランチで一時間、話しを聴いて、
最後に社長がふと、「あれ?今日なんだっけ?」
「コーチングのことを話したいんです。」
そんなやりとりでした。
それで残った僅かな時間でコーチングの説明をしたんですが、伝わったような伝わってないような。。
ただ、終わったあとのエレベーターの中で「なんか話すとすっきりするな。」とは言ってくれました。
その後コーチとして関わりたいと思い、社長にコーチングの時間をいただきました。
全部で3回くらいでしょうか。
ーー手応えはいかがでしたか?
残念ながら、自己評価としてはすべて撃沈です。
緊張してしまって自分らしくいられず、コーチとしての役割はまったくといっていいほど果たせなかった。
そして、その時抱えていた仕事が大変忙しくなってしんどい状況になり、しかもそこで大きなミスをしてしまって。自ら社長に声をかけることが出来なくなりました。
そんな場合じゃないということは、自分でわかっていましたので。
当時の上司からは「主業務をしっかりやりなさい。」と言われました。当然の言葉です。
ですが、当時の自分にとっては、学んだことを発揮できず、苦しい思いでいっぱいでした。
でもなんともならない。
社内でコーチングをすることにはかなりの逆風で、仕事も大変ですごく忙しくて。
この時期は会社でめまいを感じることもありましたし、本当に頭がおかしくなりそうでした・・・。
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